どこの誰よりも、先生を愛してる。
愛理と別れ、校舎の装飾を早急に終わらせた私は、みんながいる体育館に戻った。
入ってすぐの場所で看板を設置していた川コンビ。
私の姿を見た大川先輩が、「あっ」と声を上げて言葉を発する。
「平澤さん、お疲れっす。さっき柚木先生が探してたよ」
「……柚木先生?」
「どこ行ったか知らないけど。一応報告だけ」
「分かりました。ありがとうございます」
柚木先生……。
気まずい人の1人。
探していたって何だろう。考えながら体育館に入ろうとすると、背後から声を掛けられた。
「……あ、平澤」
「えっ、河原先生」
片手を挙げながら近付いてくる河原先生。それにまた、心拍数が加速する。
「校舎の装飾は終わったか?」
「あ、はい。終わりました」
「そうか。お疲れ」
そう言って、無言で私の背後にピタッとくっついた。
背中から体温を感じることができるほどの距離感に、妙な汗が流れる感覚がする。
「……先生、近いです」
「いや、その……」
河原先生は私の耳元に口を近付けて、そっと囁いた。
「……さっき、見ていた。渡津と仲直り出来て…良かったな」
「…………」
勢いよく振り返り、河原先生の顔を見る。先生はとても優しく微笑んでくれていた。
「……先生。盗み見は、駄目ですよ」
「人聞きの悪いこと言うな。手伝おうと思って行ったら遭遇してしまっただけだ」
「え、手伝って欲しかった」
「それよりも仲直りの方が優先だ。俺は安心したよ、その光景を見て」
頭をわしゃわしゃと撫でられ、髪が乱れまくる。
そんな私の姿を見た先生は、また微笑んで川コンビの方に歩いて行った。
「……」
また脈を打ち、熱くなる触れられた頭。河原先生への好きが溢れて止まらない。
その後、文化祭の前日準備は夜遅くに終わった。
結局、柚木先生とは会うことができないまま、私は学校を後にした。