どこの誰よりも、先生を愛してる。
文化祭本番。
体育館でのステージ発表で音響係となっている私は、生徒会の先輩と一緒にあたふたしていた。
「次のアナウンスが終わった後、12番の曲を再生」
「はい」
「その後、効果音」
「はい」
ステージでの様子なんて全く見えない。
声と音だけの文化祭。
去年とは違い、楽しさはゼロだ。
ステージ発表が終わると自由行動となり、各クラスや部活動の出し物が行われる。
そこでやっと……私も自由時間。
「………」
しかし、私には一緒に回る人がいない。
ステージ発表後の後片付けをしていると、一般の生徒たちの動きから出遅れてしまった私。
仲直りしたばかりの愛理も、圭司も……もうそこにはいなかった。
「……うーん」
体育館を出て、校舎内を彷徨う。
どうしよう。そんなこと考えていると、どこからか、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「……平澤さん」
「?」
キョロキョロと見回すと、手招きしている人の姿が見えた。
そこは、ボランティア部の部室……。
「柚木先生……!」
「こっち来て下さい」
呼ばれて部室に入ると、優しそうに微笑んでいる柚木先生に勢いよく抱きしめられた。
「……えっ」
「平澤さん、お疲れ様です」
「柚木先生……」
何故、抱きしめられたのだろうか。突然の出来事に脳がフリーズする。
「平澤さん。渡津さんから聞きました。仲直りができたのですね。……安心しました。良かったです」
「……え、何で愛理から柚木先生に?」
「僕、平澤さんを送った時に居合わせたではありませんか。それがあったから、報告して下さったそうです」
「あぁ、そっか……」
そういえば、先生が私を家まで送ってくれた時が事の発端だった。
柚木先生も居て、話を聞いていたんだよね。
「本当に安心しました。……昼休み、部室には来なくなりますかね?」
「あ……」
「いえ、良いのです。文化祭後、もし渡津さんとまた昼休み過ごせそうなら、そうして下さい。まだ気まずくて微妙だと思ったら、その時はここに来て下さい。僕はいつでも待っていますから」
「柚木先生……」
私を抱きしめたまま、優しく頭を撫でてくれる柚木先生。
全身で感じる優しさと、柚木先生への罪悪感で……涙が零れる意味不明な私。
結局、自由時間は殆ど催しを見て回らず、柚木先生と一緒にボランティア部の部室で過ごしていた。