どこの誰よりも、先生を愛してる。
「……平澤。自由時間、どこに居たんだ?」
「え?」
「お前が居ないから。実行委員への問い合わせが川コンビに集中して忙しそうにしていたぞ?」
「そ、そんなに問い合わせって来ます?」
「……すまん、嘘」
その言葉を聞き、隣にいる河原先生の顔を見る。先生は口角を少しだけ上げてニヤッとしていた。
「……柚木先生と、ボランティア部の部室にいました」
「何してたんだ?」
「他愛のない雑談」
「……」
少しだけ首を傾げて、怪訝そうな顔をしている先生。その様子を見た後、私はまた炎の方に目線を向けた。
燃え続ける炎。いつもとは違う非日常に、胸が熱くなる。
「……平澤。俺の言うことでは無いかもしれないけど。お願いだから、柚木と部活以外で関わるな」
「……」
「心配なんだ。お前のこと」
「……」
ジワッと、涙が滲む。
本当に何言ってるのか、河原先生は分かっているのだろうか。鮮明に見えていた炎がぼやけ、思わず唇を噛み締める。
「……先生、分かってます? 私、河原先生のことが好きなんですよ。そんなこと言ったらダメです。期待してしまいます」
「……」
「期待、させないで下さい」
今も触れているお互いの腕。河原先生の体温が妙に心地良い。
「……」
フォークダンスもいよいよ佳境のようで、生徒たちの熱も最高潮になっている。
「平澤」
「……はい」
私の肩にそっと触れる先生。
それに応えるように、私は先生の顔を見た。
いつもどんよりしているのに、今は少しだけ力の宿っている先生の目。
目が合うと、そっと微笑んで……耳を疑うような言葉を発した。
「……平澤菜都、俺もお前のことが好きだ」
「…………え?」
フォークダンスの曲が終わると同時に、ドーンッと打ち上がる花火。生徒会が用意した、生徒たちへのサプライズイベントだ。
キャー!! っと、歓声を上げながら花火に見惚れる生徒と先生たち。
「………」
河原先生は、空に輝く大きな花火に背を向けて……。
誰からも見えないように。
力強く……でも身体を震わしながら。
私のことを、優しく抱きしめた───……。