幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
「真宮さん、君からも言ってもらえないかね。原稿が早く必要だからと」
「あの、申し訳ありません。私どもは、原稿よりも先生のお身体が心配ですので……。息子さんと同じ意見です」
「だってさ、父さん」
「はぁ……。しかし、入院中はどうすればいいんだ。タイミング悪く家政婦の杉田さんは休暇中じゃないか」
「そうだね……。僕も仕事で頻繁に来れるわけじゃないし……」
 
 そうか、確か安浦先生は早くに奥様を亡くされて……。
 家のことで困っているのだろうか?
 
「他の家政婦さんを頼もうか?」
「駄目だ。杉田さん以外は信用できん。私の書斎に入られでもしたら……」

 先生の気難しい性格は、こういうところなのかもしれない。
 
「あの……。私でよろしければ、お手伝いいたしますが」

 自分なら信用に値する人間です、なんて言うつもりはないけれど。
 断られるのを覚悟で、申し出てみた。
 
「それはありがたいが、いいのかね? 君も仕事があるのだろう?」
「作家のケアも仕事のうちです! 何か困ったことがあったら、何なりと!」

 胸を張って答えると、先生と息子さんは顔を見合わせる。
 
「じゃあ……頼もうかね。早速だが、今日の分の洗濯物をお願いしたい」
「わかりました」
 
 紙袋に入った洗濯物を受け取った。
 うちで洗濯してくれば大丈夫かな?
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