幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
「では、合鍵を渡しておきます」
「あ、合鍵!?」

 桐人さんは、カードキーを差し出してきた。
 そういえば、さっき和風の家なのにカードキーだって驚いてたところだった。
 
「はい。僕はいつも仕事で遅くなるので……。真宮さんの都合のいい時にいつでも来てください。父の書斎には入らないように。洗濯室とキッチンは自由に使ってください」

 桐人さんが洗濯室にある引き戸を開けると、キッチンに続いていた。
 
「じゃあ、僕はまだ仕事があるので、会社に戻りますね。よろしくお願いします」
「は、はい。任せてください!」

 背筋を伸ばして返事をした。
 桐人さんが出て行った後、私はキョロキョロと辺りを見回す。
 洗濯室だけでどれだけの広さがあるの!? 室内物干場があって、乾いたものを畳んでしまえる棚が天井近くまである。棚の横には立ったままできるアイロン台まで……。さすが、大御所作家は違うわ……。
 先ほど開けた引き戸を覗くと、キッチンも広かった。
 
 さて、まずは洗濯をしないと。
 柔軟剤にこだわっていると言っていただけあって、見たことのないメーカーのものだ。
 それに、とてもいい香り。
 安浦先生の洗濯物を丁寧にネットにしまって、洗濯機へ入れる。
 今日は桐人さんの洗濯物はないようなので、洗剤を入れてスタートのスイッチを押した。

 洗濯が終わるまで、あと40分も時間が空いてしまう。
 とりあえず、裕貴にスマホメッセージで事情を説明して……。
< 13 / 51 >

この作品をシェア

pagetop