幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
 目が覚めると、肩に毛布がかけられていた。
 いつの間にか桐人さんが帰ってきていたようで、向かいでご飯を食べていた。
 
「す、すみませんっ、私ったら……!」

 慌てて立ち上がり、スマホで時間を確認する。
 すでに六時を回っていた。
 
 それよりも、何これ!?
 メッセージアプリの通知がすごいことになっている。
 軽く見ると、全部裕貴からのようだった。
 
「だいぶお疲れのようですね。洗濯は干しておいたから、大丈夫ですよ」

 桐人さんに言われて、私は一旦スマホを閉じて謝った。
 
「本当に、すみません!」
「どうして謝るんですか? お願いしてるのは、こちらの方なんですから。それに、ご飯も美味しいです」

 ああああ、寝顔を見られてしまうなんて、恥ずかしい……。
 でも、向かいで美味しそうに食べてくれている桐人さんを見て、少しホッとした。

 桐人さんが食事をしている間に、こっそりと裕貴からのメッセージを確認しておいた。
 
『今、どこにいる?』
『さすがに遅くないか? 連絡くらいしろ』
『まだ安浦先生の家なのか?』
『連絡しろ』
『自分の時間の管理もできないのか?』
『連絡しないのは無責任だぞ』
『メシはどうするんだ』

 ……嘘でしょ?
 こんな調子のメッセージが、50通くらい入っていた。
 少し遅くなったくらいで、こんなに……?
 めまいがしそうになったのを、ぐっと堪えた。
< 19 / 51 >

この作品をシェア

pagetop