幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。

4 嫉妬と束縛

 その日の夜、あの天ぷらの味が忘れられず、少しぼーっとしていた。

 あの味は家庭で再現できるだろうか、とか、
 あれを作ったら裕貴は喜んでくれるかな、とか、
 リビングで裕貴とビールを飲みながら、そんなことを考えていた。
 
 すると、裕貴が唐突に聞いてきた。
 
「しのぶ、おまえ昼間、誰といた?」

 ドキッ!
 もしかして、桐人さんと一緒にいるところを見られてた!?
 一瞬だけ、昨日の大量のスマホメッセージのことを思い出す。
 でも、やましいことは何もしていない。
 正直に答えよう。
  
「誰って、安浦先生の息子さん。マクベリの営業部長なのよ」
「やけに親しそうだったじゃないか」
「そりゃあ、毎日安浦先生の家に、洗濯に行ってますからね」

 少し、言い方が意地悪だっただろうか。
 すると、裕貴が口を開けて複雑な顔をした。
 
「……おまえ、まさかその男と……」
「ちょっと。その男(・・・)なんて言い方しないで。桐人さんとは仕事で行ったの。それに、安浦先生のお世話だって仕事の一環でしょ?」

 裕貴の言い方にカチンときて、私もつい強めの口調で言ってしまった。
< 22 / 51 >

この作品をシェア

pagetop