幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
 その後、いつものように安浦先生の洗濯物を預かって、安浦家に来た。
 しかし今日は、裕貴も一緒だ。
 
「わかってると思うけど、私が入っていいのは洗濯室とキッチンだけだから。特に安浦先生の書斎には入れないからね」
「はいはい。いやー、懐かしいなぁ。俺も編集時代よくここに来たもんだよ」

 洗濯機を回してから、二人でダイニングで待機する。

「この時間、いつも何してるんだ?」
「キッチンを使わせてもらって、お昼ご飯を食べてるわよ」
「それだけ?」
「……それだけよ?」

 ……本当は、桐人さんの分の食事も作って冷蔵庫に入れている。
 だけど、言ったらまた嫉妬しそうだし、それは黙っておこう。
 
「例の息子さんは? 桐人さん……だっけ?」
「この時間に、ここで会ったことはないわよ」

 初日に案内してもらった時と、うっかり寝てしまった時だけだ。
 
「はぁ〜。なんだ……」
「嫉妬するほどのことでもなかったでしょ? 安心した?」
「でもまあ、考えてみたら、しのぶを好きになる男なんて、俺くらいしかいないよな! ははは!」
「そ、そうよ〜。心配性なんだから〜」

 苦笑しながら、それはどういう意味なのかしら? と背中側で握り拳を作っていた。
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