幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
「ちょっ……と!!」

 残りを奪い返そうと、原稿の端に手をかける。
 すると、引っ張り合う形になってしまい、さらに原稿は破れてしまった。

「あっ……」

 ビリッ、と嫌な音が耳に入って、反射的に手を離した。

「あーあ。しのぶのせいだね、これ。これに懲りて、もうコネで出版しようなんて考えないようにな」

 言いながら裕貴は、どんどん、どんどん、原稿を破っていく。
 
 止めなきゃ。
 裕貴を止めなきゃいけないのに。
 私にはもう、その気力がなかった。

 さらには、パソコンのデータまで消してしまった。

 ちがう、ちがうのに……。
 なにが起こっているの……?
 
 このひとは、ほんとうにわたしのすきだったユウキなの……?
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