幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
「安浦先生、おめでとうございます!」

 衝立の向こうで、裕貴の声が聞こえた。
 心臓が、ズキリと痛む。

「ああ、穂鷹社長。来てくれてありがとう。ところで真宮くんは……」
「す……みません先生、真宮は、ちょっと来られない事情ができてしまいまして」
「そうかい、残念だね。一年前の入院中は彼女にとても世話になったからね。是非とも(・・・・)この場でお礼がしたかったのだが」
「それは、良かったです……。私も真宮を代理に立てた甲斐がありました」

 衝立の隙間から覗くと、裕貴は苦虫を潰したような顔をしていた。
 安浦先生に婚約者として紹介してしまった手前、本当のことは言えないだろう。
 裕貴も、認めないだけで自分に非があることはわかっているのだ。
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