幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
***

──裕貴は見事に引っかかってくれた。
 
 報復は終わった。
 そう思うと、緊張が切れたのか、私の足はガクガクと震え出した。
 私はその場にいられなくなって、喧騒に紛れて、会場の外へ飛び出していた。

 外に出ると、冷たい雨が降り続いていた。
 雨粒が肌に当たる度に、冷たさが心にまで染み込んでくるようだった。
 舗道に打ちつける雨音が、私の鼓動と重なって、心のざわめきをさらに強める。

「待って……! 待ってください、しのぶさん!」

 桐人さんが追いかけてきた。
 振り切ることはできないだろう、私は、歩を緩めて立ち止まった。
 
「どうしたんですか、今からしのぶさんのインタビューを……」
「それは、もういいんです!」

 私は振り向かずに力の限り叫んで、呼吸を整えて続けた。
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