幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。

7 エピローグ

 安浦先生の出版記念パーティーから、数日が過ぎた。
 あれから、私の心が晴れやかになったかというと、そうでもない。
 確かに私はあれで裕貴を見返すことができた。
 その瞬間だけは、胸がスッとした。

 私にもわかっていた。
 報復を終えた後は、虚しさだけが残ると。
 見返したって、裕貴が私にしたことを、なかったことにできるわけではない。
 それでも、私が前に進むためには必要なことだったと、自分自身に言い聞かせるしかなかった。
 
 安浦先生から聞いた話だが、あれから裕貴は、父親である穂鷹会長にこっぴどく叱られたそうだ。社内会議にまで発展し、社長を辞任して他の出版会社でイチから修行し直すことになったらしい。
 それに、私と婚約をした頃から他の女性に会っていたことも判明した。浮気の真偽まではわからないけれど、今となっては、もうどうでもいいことだ。
 
 私は、次へ進むために、また新しい物語を綴るだろう。
 しかしその前に、決断しなければならないことがあった。
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