幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。
「しのぶ! 俺、もう出るから!」
「ちょっと、今日のゴミ当番は裕貴でしょ!?」
「悪い! やっといて!」
「もう、またぁ!?」

 裕貴は慌てて出て行ってしまった。
 お互い働いているのだから、家事は分担しようと、事前に決めておいた。
 ……が、最近は毎日この通りである。
 忙しいのはわかるけど、そうならないように事前に決めたのに。
 そりゃあ、裕貴は社長で、私は単なる秘書。忙しさは断然裕貴の方が勝る。
 だから、家事の比率は私8:裕貴2くらい。
 でもやってくれたのは同棲し始めた最初くらいで、最近は全くだ。

 書斎にはペットボトルなどのゴミが散乱し、キッチンまで持ってきたとしてもラベルすら剥がしていない。
 靴下はリビングに脱ぎっぱなし、ワイシャツもくしゃくしゃのまま放置されているのを、私が洗濯カゴに入れている。
 
「はぁ……」
 
 時間にルーズなのは知っていたけど、まさか生活習慣までとは。
 婚約を早まったかと、こめかみを押さえる。
 でも、婚約指輪を用意してまでプロポーズしてくれたってことは、本気……なんだよね?
 右手の薬指にはめられた指輪を見つめる。

「いっけない、私も急がなきゃ!」

 とりあえず、今日出すゴミ以外は放置して家を出た。
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