冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「ダメだよ」
架月の鋭い目で見下ろされて、心臓が緊張してドクドクって鳴ってる。
「お前さあ——」

「何やってんの?」

階段の下から志月の声。
「陽波が屋上行くって言うから、見に来て良かった」
「さっすが王子サマ、か〜っこいー」
バカにしたように言うと、架月は階段をおりてどこかへ行ってしまった。
「大丈夫?」
「う、うん……鍵、志月が持ってて」
志月に鍵を渡して歩き出しても、私の心臓はまだバクバクと落ち着かない音を立てている。
架月の鋭くて冷たい視線が胸に突き刺さってるみたい。

結局架月は教室には戻っていなかった。

二人のお父さんは、私たちの高校にたくさん寄付してる。だから架月の出席日数だって、少しくらいは学校がごまかしてくれるんだと思う。
……いけないことだけど。

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