冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
『じゃあ……』
離婚の話を聞いて、ある不安がよぎった。
『二人はどうなるの? どこかに引っ越しちゃうの?』
『……』

その質問に、架月が少しの間黙ってしまった。

『志月は母さんと一緒に隣街に行く。俺は父さんと、この街に残る』
架月はさみしそうに笑って言った。
『そうなんだ、志月いなくなっちゃうんだね……さみしくなるね』

そう言ってしょんぼりした私を、架月がギュッて抱きしめた。
それから、優しくキスしてくれた。

『俺にはヒナがいればいいんだ』
『架月……』

二人の両親の離婚の話も、志月が引っ越してしまうことも悲しくてさみしかった。
だけど架月がくれた言葉と、抱きしめてくれたのはうれしくて、そんな時でさえドキドキときめいていた。

架月のさみしそうな笑顔の意味にも気づかずに。
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