冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「いつまでもこんなとこでサボってていいんスか?」

やっぱり。
架月は屋上にいた。

誰かと話してる?

「あら、随分じゃない? 誰が開けてあげたと思ってるの?」
この声……。

そーっと、いつも架月が寝ている場所の方へ視線をやる。
屋上の柵にもたれかかって、気怠げな架月の背中、と……

「架月のためだから開けてあげたのよ? お礼くらいしてくれてもいいんじゃないかしら?」

そう言って架月に身体を寄せたロングヘアのシルエットは……数学の陰山先生。
男子に人気のある若くて美人な先生。
彼女がスペアの鍵で屋上を開けたの?
「礼って、たとえば?」
「わかってるくせに」

先生の方から架月のネクタイをグイッと引っ張って……そのまま……キス。
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