冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「……ふっ」

先生の吐息が漏れるような声が聞こえる。

「……んっ……」

架月は全然拒否なんかしない。楽しんでるみたいに彼の方からキスを繰り返してる。
目の前の光景に心臓が嫌な音も鳴らさないくらいスーッて冷えていく。

「のぞき見とは、いい趣味してるな」

突然、架月の視線と声がこちらに向けられてハッとする。

「きゃっ」
その言葉で初めて私に気づいた先生が、驚いた声を上げた。
だけど私はこんな光景、もう何度も見ている。

「屋上は立ち入り禁止だよ。しかもこんな……先生となんて、最低」
「そんなこと言うわりに、ジッと見てたみたいだけどな。もしかして欲求不満?」
架月は多分、私が屋上に来た時点で気づいてたんだ。

「見たいんだったらもっと見せてやろうか?」

先生の後ろから口元に手を添えたまま、怖いぐらい冷たい声色と笑顔で言われる。
私は二人をキッとにらむ。
「か、陰山先生も、生徒に手を出すんなんて最低です。生徒会長として見過ごすわけには——」
そこまで言ったところで、先生が「はぁっ」って、まるであきれているみたいなため息をつく。

「渡加さん、子どもみたいなこと言わないでくれない?」
「え……」
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