冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
沈黙を破ったのは架月だった。

「ダサいよ、センセ」
先生を抱いていた腕を離す。

「え?」
ため息まじりの架月の発言に、先生がキョトンとしてる。
「教師が生徒脅しちゃダメでしょ。冷めるわ」
「ちょっと架月、なんなの?」
「言葉のまんま。あんたダサいよ」
架月が冷めた顔で「クスッ」って笑う。

「こいつに余計なことしたら、俺の優しい〝パパ〟にチクるよ。〝セクハラ教師〟って」
少しふざけたような言い方で、ニヤリと笑って告げる。

「なによ! あなたの出席日数だって私が——」
「俺のことまで脅す気かよ。あんた自分の立場わかってる? 教え子に手ぇ出すなんて、親父の逆鱗に触れるだろうなー」
架月の冷たい低い声が、さらに一段冷え込む。
「なっ……」
先生が〝信じらんない〟って顔で焦ってる。

「どこか遠く離れた学校に飛ばしちゃうかも。いや、教師失格だからもしかしてクビ?」
おどけたように笑ってるのに、背筋がゾクっとするほど冷酷な怖い顔。
「最低……」
先生は、青ざめた顔で屋上から出て行った。

「最低なのはテメーだろ、セクハラ教師」

〝バタン〟と閉まったドアに向かって吐き捨てるようにつぶやいて舌を出した。
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