冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー


『あれ? 架月、今日部活は?』
『サボった』
『え? 大丈夫なの?』
秋の終わりの学校帰り、中一の私が不安になって聞く。
『だってヒナ、今日一人で留守番なんでしょ?』
『うん』
『心配だから俺が一緒にいるよ』
架月がニコッて笑う。
『でも、もうすぐ試合って……』
『ヒナの方が大事』
そう言って、架月がつないだ手に力を込める。
『でも部活……いつもがんばってるのに』
架月はバスケ部の一年生で一人だけ試合にも出られるくらいバスケが上手かった。
申し訳なくなって、架月を見上げる。

『俺にとってはヒナが一番だから。特別』

架月が、くもりの無い笑顔を私にだけくれる。

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