冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー


その日も、放課後は志月の部屋にいた。
架月は帰ってきていないようで、思わずホッとしてしまう。

「陽波、ここの訳ちょっと違ってる」
「……」
「陽波?」
「えっ! あ、なんだっけ」
志月に呼ばれてハッとする。
「何かあった?」
「……え?」
「なんか今日、うわの空」
「えーっと……」
どう答えたらいいのかわからない。
「架月?」
志月のことはごまかせなくて、観念してうなずく。
「今日、架月……また屋上でサボってて」
「え? 鍵は俺が持ってたのに?」
「陰山先生に開けてもらってた……」
その言葉と私の表情で、志月は状況を察したようにため息をついた。
「他にも何かあった?」
志月って本当に察しが良くて、ちょっと困る。だけど……
「それだけ。鍵は渡してもらえなかった」
架月との間にあったことは言えない。

「……もう前みたいな架月には戻らないのかな」

冷たい目を思い出しながら、思わずつぶやいてしまった。
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