冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
また十八時半を回って、帰る時間。

今日はこの家にいる間に架月は帰って来なかった。
友だちと街で遊んでるのかもしれないし、どこかで……女の子と一緒にいるのかもしれない。
胸がチクッと痛む。

——『見たいんだったらもっと見せてやろうか?』

架月の言葉と、先生とのキスシーンを思い出して、頭から追い払うみたいに首をぶんぶん横に振ってしまった。

今日も志月が家まで送ってくれる。
「それで、昇降口のところに猫がいたから星良が捕まえようとして——」
嫌なことを思い出したくなくて、どうでもいいような話ばかりしてしまう。

「陽波」
志月が立ち止まる。

「え、何? どうしたの?」
「本当は、架月と何があった?」
「……え、えっと、べつに大したことは。……いつもみたいに〝うざい〟ってにらまれちゃっただけ」
うつむいて言う。

「陽波が目を合わせないのは、嘘ついてる証拠」
するどい幼なじみは、やっぱりごまかせない。
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