冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
今日あったことを、できるだけ波風が立たないことを祈りながら志月に話す。
彼は大きく「はあっ」って怒ってるみたいなため息をついた。

「何考えてるんだよあいつ。今夜帰ってきたら俺からキツく言っておくから」
志月の言葉にふるふる首を振る。
「そんなことしなくていい」
「でも陽波、危ない目にあったんだろ? だから今日はずっと落ち込んでるんだよね?」
また、首を振る。

「そんなんじゃないの、そんなの、全然……気にしてない」
気づいたら涙が頬を伝ってた。

「私なんか、架月にとっては本当にもうどうでもいい存在なんだって思って」

〝お前なんか特別じゃない〟

「架月の目が、冷たくて……」

〝他の女と変わらない〟

「わかってたつもりなのに——」

そこまで言ったところでまた、身体が温かい空気に包まれる。
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