冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
志月が抱きしめてくれたんだって、少し遅れて気づく。

「もうやめろよ陽波。架月は陽波のこと傷つけるだけだよ」
心臓がドキドキしてる。私のだけじゃなくて、志月のも。
「今すぐ付き合わなくてもいいって言ったけど——」
志月が私の顔をのぞき込んで、指で涙をぬぐってくれる。

「陽波、俺と付き合お?」

「……」

「大事にするから」

志月はきっと、本当に大事にしてくれる。
彼の瞳は私を優しくとらえる。

「陽波のことは、俺が守るよ」

私はコクッと小さくうなずく。

無言で〝Yes〟って言った私を、志月がギュッと抱きしめる。
それから、大切なものに触れるようなキスをしてくれる。

〝もう、傷つきたくない〟そんな気持ちで心が埋め尽くされてる。

傷つけたのは、私なのに——。
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