冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー

ep4 三日月

志月と彼氏彼女になった次の日の朝。

忘れ物をしていつもより遅い電車に乗ったら、すっごく混んでる。
志月の登校時間に合わせればよかった……なんて後悔も浮かぶ。
せっかくだから一緒に学校に行こうかって話したけど、今日は志月が日直で早いから一緒に登校するのは明日からってことにした。

それにしても……まさか志月と付き合うことになるなんて。
昨日のことを思い出して、思わず前に抱えたリュックをギュッて抱きしめる。

そんなふうにユウウツとフワフワした気持ちを行ったり来たりしながら満員電車に揺られていたら、太もものあたりに、なでられるような気持ち悪い感触……。

痴漢に遭うのは初めてじゃない。どうしても声が出せない。
怖いし、もしカン違いだったら恥ずかしいって思ってしまう。
それにこの混み方じゃ、今日は移動もできなそう。
学校の最寄駅までの数分間……嫌だけど我慢するしかない。
リュックをまた抱きしめて、唇をグッて結ぶ。
だけどやっぱり気持ち悪いし……怖い。

「やめろよ」

触られている感触が無くなったのと同時に、高い位置からの聞き慣れた声。
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