冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
それから駅に着くと、私たちは駅員さんに犯人を引き渡した。
さっきの女性がその場に残ってくれたから、簡単な事情聴取だけで学校に向かう。
よりによって今日、架月に助けられて、架月と一緒に登校することになるなんて。

「助けてくれてありがとう」
今日は本当に助けてもらったから、はっきりお礼を言う。
だけどよく考えたら昨日もっとひどいことをした張本人だと思うと、なんだかお礼がおかしい気もする。
「べつに」
「前にもあったよね、こういうこと……」
助けて貰うのは二度目。
「覚えてない」
すっかりいつも通りの架月。どんどん前を歩いてこっちを見てもくれない。
昨日のことも本当になんとも思ってないんだろうな。
また変わってしまった彼を感じて、歩きながら小さくため息をついてしまう。
「架月」
長い脚の歩幅に、早歩きになりながらついていく。
「あのね…… 私」
なんとなく言いにくくて、小さく息を飲む。
「志月と付き合うことになったの」
「……へえ」
全然、表情が見えない。
「よっぽどこの顔が好きなんだな」
また、バカにしたように吐き捨てる。
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