冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「お前さぁ、なんなんだよ。家に女の子連れ込むなって言ってるだろ?」
志月は隣の部屋の主にお説教。
「あーはいはい、さすが優等生の志月くん」
そう言って部屋から出てきた彼と目が合う。

志月と同じ顔だけど、漆黒みたいな真っ黒で長めの髪と鋭くて冷たい目つきの(すさ)んだ表情。
志月の双子の兄、架月。

「自分だって連れ込んでるくせにな」
「おい、陽波はそんなんじゃないだろ? 謝れよ」

「変わんねーよ、女なんて誰だって」
架月が吐き捨てるように言う言葉に、胸がチクッと痛む。
「おい」
志月の声が怒りを帯びる。
「いいよ志月。気にしてない」
うつむいて言う私なんか気にせず、架月はどこかへ行ってしまった。

「ったく、本当にしょうがないな架月は。ごめんな」
「大丈夫」
「前はあんなんじゃなかったのにな」
二人は双子だから、当然架月も私の幼なじみ。昔はよく三人仲良く遊んでた。

——『ヒナのこと、待ってるから』

昔の記憶が頭をよぎる。胸がギュッてなって、息が苦しくなる。

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