冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「そんなんじゃないよ」
嫌な言い方をされて、ついムッとしてしまう。

双子だけど、架月と志月は全然違う。
「志月は……架月みたいに冷たい目、してないもん」

私がそう言うと、架月は立ち止まってこっちを見た。
「し、志月の目は優しいから。架月と志月は……双子だけど全然似てない」
「ならマジで俺なんかにかまってないで〝優しい志月くん〟に守ってもらえよ」
架月はクルッと向きを変えて、さっさと歩いて行ってしまった。

「……さっき」
一人になって、ポツリと口にする。

——『陽波、こいつに触られてたよな?』

どれくらい振りかわからない、架月が口にした私の名前。

〝お前〟じゃなかった。
……だけど〝ヒナ〟でもなかった。

「ふぅ」ってため息をつく。
私はもう志月の彼女なんだから、こんなことで胸を騒つかせていたらいけない。
なのに心臓がフクザツな音を鳴らして、落ち着くまでには時間がかかりそう。

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