冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー


『架月見て、もう月が出てる』
夕暮れの空に三日月が見えて指をさす。

『三日月だから、架月の月だね』
『え、なんで?』
不思議そうな顔の架月を見て「ふふ」って笑う。

『架月は私を〝ヒナ〟って呼ぶでしょ? だから〝ヒナミ〟の〝ミ〟は架月にあげる。そしたらほら、〝ミカヅキ〟』

『なにそれ』
架月が笑うから、ちょっと照れくさい。

『でもうれしい。三日月見るたびにヒナが俺のこと思い出すと思うと』

そう言って、いつもみたいにギューッて抱きしめてくれる。

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