冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
だけど、この質問の意味は〝気にして欲しくない〟ってことだってわかる。
嘘でもいいから否定しなくちゃいけない。
〝気にしてない〟って首を振る。

「ごめん陽波」
謝られるなんて思ってなかったから、思わず志月の顔を見る。

「ノートもらってる時点で陽波があいつのこと気にしてるのなんてわかりきってるのに、わざと否定させるような質問した」
「志月……」
「俺にとっても架月は兄弟だから、気にしてくれてありがたいと思ってるんだ。ありがとう」

〝せつなそうな顔〟なんて今まで知らなかったけど、今の志月の顔がきっとそういう顔だ。

志月の頬に両手で触れて背のびして、私から唇を重ねる。

「そんな顔しないで」
彼の首に腕を回して、ギュッって抱きしめる。
「私は志月の彼女でしょ?」
志月も私の背中に腕を回して、強く抱きしめる。

ほとんど毎日一緒に登下校してるし、前みたいに志月の部屋で勉強だってしてる。
デートでお出かけだってした。
前と関係が変わっているのにこんな顔をさせてしまうのは……志月がずっと、私と架月を見てきたから。
あの頃だって、志月は今と変わらずに静かで落ち着いた優しい志月だった。

三人で遊ぶことだってよくあったのに——志月はどんな気持ちで私たちを見ていたんだろう。

< 36 / 73 >

この作品をシェア

pagetop