冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー


みんなの制服が半袖シャツの夏服に変わり始めた、六月初めの放課後。
生徒会は校内設備の見回り点検を行なっていた。

「あ、フェンスに穴。って、こんなのどこかの業者にお願いすればいいのにねー」
グラウンド脇のバスケコートでそう言ったのは星良。
彼女は美化委員をしていて、今日は生徒会と美化委員の共同作業だ。
「プロにも見てもらうみたいだけど、生徒に学校を大事にして欲しいんだって」
そう言うわりに、グラウンドから外れたこの辺りのメンテナンスはあまりされていない気がする。
バスケ部は体育館で練習や試合をするから、この狭いコートは普段はあまり使われていない。
はずなんだけど……

「いけー! 架月!」
そんな男子の声とギャラリーの女の子たちの声、その隙間にテンポの速いボールのドリブル音が響く。
よりによって今日は架月と友人たちが遊びでバスケをしてる。
「え? あれって魔王?」
星良の中ではいつの間にか志月が〝王子〟で架月が〝魔王〟になっているらしい。
「えーっ!?」
見ないようにしてるけど、星良の声で何が起きてるのか大体わかってしまう。
「ねえねえ!」
星良が私のシャツの端を引っ張る。
「今魔王、ダンクシュートってやつしてなかった!? ドリブルも超速い!」

「当たり前だよ」

私はクリップボードに挟んだチェックリストに書き込みながら言う。
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