冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「昔はバスケ部でエースって言われてたんだから」
中学二年の始めまでの話だけど。

「えー! じゃあなんでうちのバスケ部に入ってないの?」
その質問には、つい言葉を詰まらせてしまう。
「さ、さあ? 嫌になっちゃったんじゃない?」
「え、でも今やってるよ?」
「あれはね……」
つい、ため息をついてしまう。

「賞品を賭けてプレーしてるんだよ。全然健全なスポーツマンシップじゃないの」

架月がお昼だとか飲み物だとか……他にも、いろいろなものを賭けて三人制のバスケをしてるのを時々見かける。
当然、架月より上手い人はいないから毎回架月のいるチームが賞品をゲットしてて、ギャラリーの派手めな女の子たちにキャーキャー言われてるのも何回か見た。

あんなに真剣にがんばってたバスケをそんな風に扱うなんて、架月が変わってしまったんだって一番はっきり突きつけられてしまうから……この空間は好きじゃない。

さっさと点検を終えてここを離れよう。そう思いながら、閉まらなくなってしまっているコートの扉の金具をチェックしている時だった。

「陽波っ!!」

「え……?」

名前を呼ばれて、何かが飛んで来る気配を感じて顔を向けると、目の前に大きくて丸い物の影が見えた。
バスケットボールが飛んできたんだってわかったけど、避けられなくてとっさに目をつむる。
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