冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「体育の授業くらいサボらずにちゃんと出ろよ」
架月の背中にむかって志月が声をかける。
架月は振り返ることなく行ってしまった。

「本当に勝てるって思ってたんだ……」
人がはけたコートで志月に聞く。
「双子だからね。あいつの動きのキレが昔と全然違うのが嫌でもわかる」
苦笑いで教えてくれる。
「そっか。志月かっこよかった」
そう言って笑ってみたけど、なんとなく胸がモヤモヤしている。
ううん、志月がかっこよかったのは本当。
だけど……架月がバスケで誰かに負けるところなんて初めて見たから。

「俺はバスケの勝負なんかより、架月より先に陽波を守れなかったのが悔しい」
「……」
「でも、陽波にボールが当たらなくて良かった」
そう言って志月は私の頬をなでてくれた。

架月が私を助けてくれたのは、きっとただの気まぐれ。

——『陽波っ!!』

だけど、ボールが飛んできた時に聞こえた声は、志月より少し低くて、すごく焦ってた気がする……。
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