冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー

ep6 留守

バスケの勝負から二週間。
梅雨入りして雨の日が続いてる。

学校が半日で終わった木曜日、放課後は志月の部屋で過ごす約束。
志月は先生と話してから下校するって言うから、私だけ先に帰ってきた。
『先に入ってていいよ』って鍵を渡してくれたけど、いくら幼なじみで彼女だからってよその家に上がるのは気が引けて、玄関のドアの前で待っている。

スマホが震えてメッセージの受信を知らせる。
【乗ってる電車が事故で止まったから遅くなりそう】
【適当にテレビとか見てて】
〝ごめん〟のスタンプが添えられている。

返信しようとしたところで、身体がブルッと小さく震える。
雨のせいか少し肌寒い。

仕方なく志月を待たずに家に上がらせてもらうことにした。
「おじゃましまーす……」
玄関のドアを開けて小さな声で言ったら足元に目をやって、架月の靴も無いことを確認する。
留守なことにどこかホッとする。
いつも来ている家だから、電気のスイッチもテレビのリモコンの場所もわかってるけど、誰もいない室内はどこか居心地が悪い。

そんな感じで十五分くらい経った頃、架月に渡す授業のノートがあったことを思い出した。
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