冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
ドアの方から冷たい怒りに満ちた声が聞こえて、心臓が止まるんじゃないかと思うほどギクッと大きな音を立てた。

「あ、あ……か、え、えっと……」
唇が震えてしまって、うまく言葉が出てこない。

「のぞきの次は不法侵入かよ」
光の無い架月の目が、怖いぐらい冷たい。

必死になって首をぶんぶんと横に振る。
「ち、ちが……の、ノートっ」
持っていたノートを、震える手で握りしめて架月に見せる。
「この間俺が言ったこと忘れたのか?」

——『これ以上うぜえことするなら、次はマジでやめねーから』

部屋に入ってくる架月から逃れようと後退(あとずさ)りして、ひざの後ろがベッドにぶつかってストンッとベッドに落ちるみたいに座り込んでしまった。

「誘ってんの?」
架月が意地悪く笑う。

追い詰められて、ただ首を振って否定することしかできない。

そのままベッドの上に押し倒されて、架月が冷たい目のまま覆い被さる。
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