冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
『やっぱりもう部活辞めようかな』
中一の三学期には、架月はそんなことを言い出すようになっていた。

『なんで? バスケがんばってたのに……』
『だってヒナと一緒にいる方が楽しいもん』
家で二人きりになる時間が増えて、架月はハグしたりキスしたり、スキンシップもどんどん増えていった。
『でも私、架月がバスケしてるところ、大好きだよ』
それは本心でもあったけど、次第に架月を説得するための決まり文句みたいになっていった。
そういう話をしたときは、架月は決まって私を抱きしめた。
『会う時間が少なくなっても、ヒナはずっと俺といてよ』
『架月?』

『何があっても、絶対に俺を選んで』

架月がよく言ってた言葉『俺を選んで』。
彼氏として他の男の子より好きでいてっていう、単純な意味だと思ってた。
『俺を選ぶって、約束してくれる?』
『う、うん……』
『俺にはヒナさえいれば、それでいいから』

そんな架月が、中学生の私にはどんどん重たい存在になっていった。
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