冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
翌日のお昼近く、志月を見送るためにマンションに行った。

『架月のやつ、明け方まで帰ってこなかったんだよね。だからまだ寝てるみたい。どこで何してたんだか』

志月の言葉に、心臓がドクンって脈打つ。

『じゃあね、陽波。また帰ってくるから』
そう言って志月は今の家に帰っていった。

心臓が落ち着かないリズムをきざんでいるのを感じながら、架月の部屋のドアをノックする。
『架月……寝てるの?』
返事が無いから、そっとドアを開けた。今までずっとそうしてたから。
『入ってくんなよ』
ベッドの上に寝そべって背を向けた架月の声は、昨日までとは別人みたいに冷たかった。

『昨日、行けなくてごめんね』
『……』
『あ、あの、今夜——』

『結局ヒナも志月を選んだんだな』

『え? 架月、それってどういう——』
『出てけよ』
『ねえ——』

『出てけって言ってんだろ!』

起き上がってこっちを見た架月の目も、声と同じくらい冷たくて怖かった。
裏切り者を見るような、そんな目だった。
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