冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー


中一の夏休み。

もうあの頃には、俺も架月も両親が離婚するってことはなんとなくわかってた。
本宅があるのに、母さんは俺たちと一緒にわざわざマンションに住んで父さんと長いこと別居してたからね。
だから、離婚自体はもうどうでも良かった。

俺たちが気にしてたのは〝二人が別れたら、自分たちはどうなるのか〟とくに架月は〝陽波と離れ離れになるのか〟ってことをすごく気にしていたと思う。

二人とも、父さんじゃなくて今一緒に過ごしている母さんに引き取られると思ってた。
将来的に一之瀬の家を継ぐことになるとしても、少なくとも今は。

だけど、母さんが父さんと今後のことを話し合うために俺たちも連れて本宅に行った日。
俺たちは夜中に二人とも目が覚めて、キッチンに行って飲み物でももらおうかってリビングを通りかかった。
ドアの隙間から見えた母さんが——

『……じゃあ、志月は私が引き取らせてもらいます』
そう言っているのを二人で聞いてしまったんだ。

架月はその時は〝何でもない〟って顔で飲み物を取りに行ったけど、きっとすごく絶望してたと思う。
俺と二人の時だって厳しかった父さんの教育の矛先(ほこさき)が全部自分に向かうのは想像がつくし、何より……母さんが弟だけ連れて、あの家に自分一人を残して、いなくなるって選択をしたんだから。

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