冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー

ep8 条件

「あの夜……弱くて子どもで、架月のところに行けなかった自分を今でも毎晩後悔してる」
顔を覆って泣きながら言う。

「架月の孤独に気づいてあげられなかったこと……そういう架月から、逃げたこと……」
涙が次から次へ流れてくる。

「行けなかった? あの夜志月を、自分が楽しい方を選んだだけだろ?」
架月の声は、冷たい。

「選んでないよ……」

「……」

「……行ってない、志月の方にも。架月だけ一人にするなんてできるわけない」
架月が言ってたみたいに、誰にでも良い顔してるのかもしれない。
だけど、架月以外を選ぶなんてこともできなかった。

「……嫌われるだけのことをしたって、わかってる。だけど、あの時から本当にずっと後悔してる」

架月が誰かといるのを見るたびに思っていたこと。

「もう、架月の〝特別〟には戻れないんだって」

「え……?」

「このベッドで架月がいつも女の子に触れてるのだって、屋上で誰かとキスしてるのだって、苦しくて苦しくてたまらなかった。〝そこは私の場所なのに〟って……する資格もない嫉妬を、ずっとしてる」

架月を傷つけておきながら、自分勝手で醜い感情。
< 58 / 73 >

この作品をシェア

pagetop