冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「え、えっと……」
戸惑ってしどろもどろになる私に、志月が「クスッ」と笑みをこぼす。
「べつに今すぐ付き合いたいとか、返事が欲しいってわけじゃない」
「……」
「少しは意識して欲しいって思っただけだから」
同い年とは思えない、余裕のある優しい顔。

ドキドキしてる間に家についてしまった。
「……送ってくれてありがとう。じゃあ、また明日。おやす——」

言いかけたところで、身体がフワッと何かに包まれる感覚。

「さっき言ったこと」
気づいたら、志月に抱きしめられてた。
「本気だから。陽波、再会してから昔より大人っぽくなってたけど、中身はかわいいまんまでうれしかった」
心臓がドキドキしてる……。なんて言ったらいいのかわからない。
言葉を発せないでいる私に、志月が見つめて笑いかける。
「本当かわいいな、陽波」
「し、志月……急にそんな」
慌てる私にまた笑いかける。
「顔が赤いみたいだな。少しは意識してくれたんだ? うれしいな。でもね、陽波——」
志月が耳元でささやく。

「急なんかじゃないよ。俺は昔から陽波のこと、好きなんだよ」
優しい低音ボイスでそう言うと、彼は私を解放した。

「じゃあ、おやすみ」
「……お、おやすみ」

左耳が熱い気がして、つい手で押さえてしまった。顔だってきっと志月の言う通り真っ赤だ。
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