冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
『陽波?』
耳元に響く声にドキッとする。

『番号変わってないんだな、良かった』
志月に似てるけど、少しだけ低い声。

「……どうしたの?」
『突然悪い。……あのさ陽波、今出てこれないか?』
「え……」
『この前の続き。話がしたい』

志月の顔が脳裏に浮かぶ。

『河川敷で待ってる』
「行けないよ」
『待ってるから』
一方的に電話を切られてしまった。

私の頭の中には、志月のせつなげな顔と……あの頃の、さみしそうな架月の顔が浮かんでる。


十分後。
家の近くの河川敷には遊歩道があって、そこにはベンチがある。
昔はよくここに座って架月といろんな話をした。

「悪い、呼び出して」
「あんな風に電話切って、強引だよ」
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