冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「誰かと思った。なんかひさびさに双子って感じがするな」
志月が冷静に、だけど皮肉っぽく笑って言った。

「で? 朝からどうしたんだよ」

「ヒナ、返してくんない?」

架月の言葉にドキッとする。

「陽波はモノじゃないだろ?」

志月の発言で、入り口のそばに立っている私に視線が集まる。

「モノじゃないけど、ヒナは俺のだから」

「散々傷つけておいて、今さらだろ」
「もう傷つけない」

「架月は本当に勝手だな」

二人の会話に、息がグッて苦しくなる。
まわりは冷やかすみたいにキャーキャー言いながらこっちを見てくる。

「もちろんタダでとは言わない」
「何だよ、またバスケでもするのか?」

「今度の期末で俺がトップになったら、ヒナを返してもらう」

七月にある学期末試験。
勉強の試験なんて、いつも志月が満点近い点でトップを取ってる。
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