冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「そんな不利な条件でいいのか?」
「そのくらいの条件じゃないとケジメがつかない」

志月がため息をつく。

「俺は構わないけど、決めるのは俺じゃない」

そう言って、今度は二人の視線がこちらに向けられた。

「どうする? 陽波」

この勝負はこの前のバスケ以上に結果が見えてる。
ほぼ100パーセント、志月が勝つ。
それで架月があきらめてくれるなら、志月を傷つけずに済むなら。

「それでいい。試験でトップ取った方と付き合うよ」

私が言った瞬間、教室が揺れるんじゃないかってくらいの歓声や雄叫びが上がって、一瞬にしてお祭り騒ぎになってしまった。

自分の席に戻っても、架月と隣同士だからみんなの視線が集中してる。

「勝てない勝負なんか挑んで……何考えてるの」
「勝つよ。俺にはヒナのノートがあるから」

志月を応援してるはずなのに、思いがけないそのひと言で目が潤んでしまった。

「……ヒナって呼ばないでって、言ったでしょ」
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