冷たい月 ー双子の幼なじみと消えない夜の傷あとー
「なんかあった? いつもと雰囲気違ったけど」
「べ、べつに……」
「あやしいな〜! 教えろー」
星良が私のブレザーの上からコチョコチョくすぐってくる。
「ちょっとー!」
って、私が振り返った瞬間だった。

「邪魔」

通路をふさいでた私たちに、高いところから不機嫌そうな低い声。
「……あ、ごめん……おはよう」
進路をあけてあいさつする私なんか無視して、架月は自分の席に向かう。
そして不機嫌そうなまま、ドカッと腰を下ろす。
「こっちはいつも通りだね」
星良がヒソヒソ耳打ちする。

そう。べつに今日が特別不機嫌なわけじゃなくて、学校に来た日の架月はだいたいこう。

ブレザーにニットベスト、それにワイシャツとネクタイをきちんと着こなしていた志月に対して、架月はブレザーにボタンが二つ開いたワイシャツ、それにゆるいネクタイ……。元はそっくりな顔だけど、顔つきとファッションがあまりにも違うから、とても双子には見えない。

そんな架月の席は私の隣だったりする。

朝のホームルーム。名前を呼ばれた架月は熱の無い返事で出席を知らせる。
一時間目、国語。机に突っ伏して爆睡。
二時間目、数学。私のとなりの席は空っぽ。

いつものことだけど、ついため息をついてしまう。

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