エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない
1.不運と出会い
今年は厄年だっただろうか。
日高愛美は誰もいない資料室でため息をついた。
不運の始まりは、数日前――
愛美は、恋人の健吾といつもの居酒屋で食事をしていた。
「あのさ、もう無理だわ。別れよ」
「……え? 急にどうしたの?」
「いや、俺達合わないっしょ。愛美は真面目すぎるってか、一緒にいると疲れる」
その日は健吾がずっと仕事の愚痴をこぼしていた。愛美は健吾の機嫌がこれ以上悪くならないように、相槌を打ちながらひたすら愚痴を聞いていた。
(それが駄目だったの?)
急に不機嫌そうな顔で別れを告げられたのだから、愛美は呆然とした。
上手く返事が出来ないまま、ビールを一口飲み込む。いつもと同じビールのはずなのに、いつもよりずっと苦かった。
その後のことはあまり覚えていない。文句を二言三言投げられた気がするが、内容が頭に入ってこなかった。
唯一覚えているのは、
「待ってよ! 悪い所は直すから、もう少し話し合おう?」
「そういう所がウザいんだって!」
という会話だけだ。
愛美がぼんやりとしている間に、気がついたら健吾は帰ってしまっていた。
取り残された愛美がノロノロと店の外に出ると、ちょうど雨が降ってきて、家につく頃にはびしょ濡れだった。
「あーあ、最悪……」
適当にシャワーを浴びてベッドに突っ伏した愛美は、そのまま風邪をひいて三日間会社を休むこととなる。
けれど愛美の不運はそれだけでは終わらなかった。
日高愛美は誰もいない資料室でため息をついた。
不運の始まりは、数日前――
愛美は、恋人の健吾といつもの居酒屋で食事をしていた。
「あのさ、もう無理だわ。別れよ」
「……え? 急にどうしたの?」
「いや、俺達合わないっしょ。愛美は真面目すぎるってか、一緒にいると疲れる」
その日は健吾がずっと仕事の愚痴をこぼしていた。愛美は健吾の機嫌がこれ以上悪くならないように、相槌を打ちながらひたすら愚痴を聞いていた。
(それが駄目だったの?)
急に不機嫌そうな顔で別れを告げられたのだから、愛美は呆然とした。
上手く返事が出来ないまま、ビールを一口飲み込む。いつもと同じビールのはずなのに、いつもよりずっと苦かった。
その後のことはあまり覚えていない。文句を二言三言投げられた気がするが、内容が頭に入ってこなかった。
唯一覚えているのは、
「待ってよ! 悪い所は直すから、もう少し話し合おう?」
「そういう所がウザいんだって!」
という会話だけだ。
愛美がぼんやりとしている間に、気がついたら健吾は帰ってしまっていた。
取り残された愛美がノロノロと店の外に出ると、ちょうど雨が降ってきて、家につく頃にはびしょ濡れだった。
「あーあ、最悪……」
適当にシャワーを浴びてベッドに突っ伏した愛美は、そのまま風邪をひいて三日間会社を休むこととなる。
けれど愛美の不運はそれだけでは終わらなかった。
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