エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない
「室田は僕の同期なんです。悪い奴じゃないから、気兼ねなく話してあげてください。悪い話じゃないはずです」
博明にそっと背中を撫でられ、愛美は深呼吸した。
「分かりました……。室田さん、失礼しました。私に答えられることだったらお話します」
愛美が室田に向かって一礼すると、「とりあえず座ろうか」と言われてソファーへと促される。
室田と向かい合ってソファーに座ると、博明が当然のように愛美の隣に腰を下ろした。
「まず日高愛美さん、佐伯のオファーを受けてくれてありがとう。正直助かったよ。突然曖昧な理由で派遣社員を切ると派遣会社との兼ね合いがね……」
苦笑しながら頭を下げられ、愛美は驚いた。
人事部には迷惑をかけたと思っていたから、感謝されるとは思わなかった。
「いえ、私はただこの会社を辞めたくなかっただけです。佐伯副社長に拾ってもらえて幸運でした」
「君の評判は本当に良かったんだ。人事部に上がってきた評価は正社員登用に相応しいものだった。だけど急に取りやめにするって営業部から連絡が来て……」
室田の口から語られたのは、愛美の知らないことばかりだった。
日高愛美という派遣社員は正社員登用の話が出た途端、仕事をサボりだした。そして適当な資料を作り、幾度となく営業に迷惑をかけるようになった。
何度も指導しても改善の余地なく、同僚や上司は頭を抱えていた。
だから、正社員登用の話は取り消すべきだ、と――
人事部は営業部の訴えを受け入れ、日高愛美は契約満了で更新なし。当然、正社員登用もなしとなったのだ。
博明にそっと背中を撫でられ、愛美は深呼吸した。
「分かりました……。室田さん、失礼しました。私に答えられることだったらお話します」
愛美が室田に向かって一礼すると、「とりあえず座ろうか」と言われてソファーへと促される。
室田と向かい合ってソファーに座ると、博明が当然のように愛美の隣に腰を下ろした。
「まず日高愛美さん、佐伯のオファーを受けてくれてありがとう。正直助かったよ。突然曖昧な理由で派遣社員を切ると派遣会社との兼ね合いがね……」
苦笑しながら頭を下げられ、愛美は驚いた。
人事部には迷惑をかけたと思っていたから、感謝されるとは思わなかった。
「いえ、私はただこの会社を辞めたくなかっただけです。佐伯副社長に拾ってもらえて幸運でした」
「君の評判は本当に良かったんだ。人事部に上がってきた評価は正社員登用に相応しいものだった。だけど急に取りやめにするって営業部から連絡が来て……」
室田の口から語られたのは、愛美の知らないことばかりだった。
日高愛美という派遣社員は正社員登用の話が出た途端、仕事をサボりだした。そして適当な資料を作り、幾度となく営業に迷惑をかけるようになった。
何度も指導しても改善の余地なく、同僚や上司は頭を抱えていた。
だから、正社員登用の話は取り消すべきだ、と――
人事部は営業部の訴えを受け入れ、日高愛美は契約満了で更新なし。当然、正社員登用もなしとなったのだ。