エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない
室田はにこにこと笑っているが、目だけは真剣だった。
(営業部が隠すような、なにか……)
あまり思い出したくないけれど、派遣だった頃を振り返ってみることにした。
「えーっと……私が退職前に聞いたのは、私のせいでマルチカフーズとサンオウデパートとの取引がなくなったということだけで……あっ」
「なにか思い出した?」
「担当営業が接待の場で取引先の方と口論になったと……言っていました。お相手は二人とも女性の方で、ウマが合わなかったとか」
健吾の愚痴が多くなった頃、「せっかく接待してやってるのに、つけあがりやがって! どいつもこいつも面倒くさい奴ばかりだ!」と言っていたことを思い出した。
「あー接待かぁ、見えてきたな。教えてくれてありがとう」
室田には心当たりがあったのだろう。深く頷くと、そのままスッと立ち上がった。
「じゃ、俺は戻るから。日高さん、佐伯に何かされたらいつでも相談してね」
それだけ言い残すと、足早に去っていった。
(営業部が隠すような、なにか……)
あまり思い出したくないけれど、派遣だった頃を振り返ってみることにした。
「えーっと……私が退職前に聞いたのは、私のせいでマルチカフーズとサンオウデパートとの取引がなくなったということだけで……あっ」
「なにか思い出した?」
「担当営業が接待の場で取引先の方と口論になったと……言っていました。お相手は二人とも女性の方で、ウマが合わなかったとか」
健吾の愚痴が多くなった頃、「せっかく接待してやってるのに、つけあがりやがって! どいつもこいつも面倒くさい奴ばかりだ!」と言っていたことを思い出した。
「あー接待かぁ、見えてきたな。教えてくれてありがとう」
室田には心当たりがあったのだろう。深く頷くと、そのままスッと立ち上がった。
「じゃ、俺は戻るから。日高さん、佐伯に何かされたらいつでも相談してね」
それだけ言い残すと、足早に去っていった。