エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない
 呆れられるか怒られると思っていた愛美は、ぽかんとその様子を眺めることしか出来なかった。

「そうですね。愛美さんの家を存じ上げなかったので、我が家にご招待しました。ふふっ、酔ってる愛美さんは可愛らしかったですよ」
「可愛っ……!? あの、私……途中から記憶がなくて……」
「では僕だけの思い出として、大切にしまっておきますね」

 博明は愛おしい思い出をしまうように胸にそっと手を当てる。
 その様子に愛美の身体がカッと熱くなった。

「っ……! 佐伯副社長、あまりからかわないでくださいっ」

 叫ぶように告げると、博明は微笑みながら愛美に近づいて来た。そのまま跪いて愛美の膝に手を乗せる。

「名前で呼んでくれないのですか?」

 首を傾げながら上目遣いで尋ねられて、愛美の身体はますます熱くなる。もはや何が起こっているのか分からなかった。

(私、本当に一体何をしたの!?)

 チラリと博明を見ると、まだ楽しそうに笑っていた。

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