エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない

4.デート

 日曜日の昼過ぎ、愛美は少し緊張していた。
 もうすぐ博明が迎えに来る時間だ。

 愛美はクローゼットの前に立ち尽くして、服を手に取ったり戻したりしていた。

(何をするのか聞きそびれちゃった。家のお手伝いとかかしら? 動きやすい格好が良いだろうけど……)

 悩んだ末に、会社に来ていくようなオフィスカジュアルを選んでしまう。

「これなら動きやすいし、汚れても洗えるやつだし……よしっ」

 なんとか準備を終えた頃、インターホンが鳴った。

 博明だ。

「お待たせしました。今日はよろしくお願いします」

 薄手のニットにデニムというラフな格好をしている博明が、眩しく見える。

「こちらこそ! それで今日は何をすれば?」
「とりあえず、僕のワガママに付き合ってもらいます。さあ乗って」

 流れていく景色を見ていると、車は昨夜来た方向とは違う方へと進んでいることが分かる。

(家に行くんじゃないのかしら?)

 てっきり家事手伝いだと思っていた愛美は、ちらりと博明の横顔を見た。

「僕の顔になにかついてます?」
「どこに行くのか考えていました。博明さんの家とは反対方向ですし。それに、どこか行くなら本当は秘書である私が運転すべきでしたよね」
「今はプライベートですから。それに僕、運転するのが好きなんです。どこまでも行ける気がするでしょう?」

 からからと笑う博明は、確かに仕事モードではなく完全にプライベートモードのようだった。

 昨日と同じ距離間のはずなのに博明を近く感じる。

「確かに、博明さんの運転ならどこまでも行けそうです」




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