エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない

　思わず博明の顔をマジマジと見る。楽しそうに笑みを浮かべていた博明は、愛美と目が合うと真剣な表情をした。

「また一緒に出掛けてくれますか？」

　先程の冗談とは違う、真面目なトーン。

「はい。私で良ければ」
「良かった。ではまたお誘いしますね」

　その後、お酒を飲んだ訳じゃないのに愛美はふわふわとしていた。




　食事を終えて、車で愛美の家までやってきた。
　もうお別れの時間だ。

「今日はありがとうございました。博明さんの好きなものが知れて良かったです」

　そう言って一礼すると、博明はくしゃりと笑った。

「それなら良かったです。愛美さんのおかげで僕も楽しかったです」

　初めてみる表情に、胸がきゅうっと締め付けられる。

（こんな表情見せられたら勘違いしてしまうわ）

　今日の博明は、完璧なエスコートをしていた。



　まるで自分が恋人になったかのような錯覚をしてしまいそうなほどに。