エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない
「結構です。急ぎますので失礼します」
話しても無駄だ。せっかく早く来たのに時間を無駄にしたくない。
愛美は健吾の脇を通り過ぎようとした。
「待てって!」
「痛っ……」
思い切り腕を掴まれて思わず声が出る。
健吾を睨むと、その後ろに人影が見えた。
(あっ……)
愛美がその人物に気づいたのとほぼ同時に、その人は健吾に声をかけた。
「失礼、僕の部下になにかご用ですか?」
鋭い目つきで健吾の肩に手を置いたのは、博明だった。
声こそ落ち着いているが、その手にはかなり力が入っている。
「さ、佐伯副社長!? いえ、昔の同僚だったので懐かしくて声をかけただけですよ。ははは、では失礼します!」
健吾は博明を見た途端、愛美の腕から手を離してにこやかな笑みを作る。
そしてそのまま足早に去っていった。
(助かった……)
「大丈夫でしたか? さっきの……営業部の方ですよね? 例のお付き合いされていた方ですか」
「はい……あ、ありがとうございます」
膝がカクカクと震え、博明から差し出された手をぎゅっと握る。
安堵から全身の力が抜けていった。
話しても無駄だ。せっかく早く来たのに時間を無駄にしたくない。
愛美は健吾の脇を通り過ぎようとした。
「待てって!」
「痛っ……」
思い切り腕を掴まれて思わず声が出る。
健吾を睨むと、その後ろに人影が見えた。
(あっ……)
愛美がその人物に気づいたのとほぼ同時に、その人は健吾に声をかけた。
「失礼、僕の部下になにかご用ですか?」
鋭い目つきで健吾の肩に手を置いたのは、博明だった。
声こそ落ち着いているが、その手にはかなり力が入っている。
「さ、佐伯副社長!? いえ、昔の同僚だったので懐かしくて声をかけただけですよ。ははは、では失礼します!」
健吾は博明を見た途端、愛美の腕から手を離してにこやかな笑みを作る。
そしてそのまま足早に去っていった。
(助かった……)
「大丈夫でしたか? さっきの……営業部の方ですよね? 例のお付き合いされていた方ですか」
「はい……あ、ありがとうございます」
膝がカクカクと震え、博明から差し出された手をぎゅっと握る。
安堵から全身の力が抜けていった。